よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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最近のコロナウイルス関連での患者さんとのQ&A

こんばんは。

 

新型コロナウイルス感染症への対応に、どの病院も大変苦労しています。

定期的に前勤務の病院に伺い、現在の様子を教えていただくのですが、未知の脅威に対して本当に一つ一つ、手探りで工夫して荒波に耐えています。
あれはどうする、これはどうすると、次々に新しい判断を迫られて、現場も、指揮する人も大変疲弊している状況で、当事者から外れた私には想像もできないようなストレスと戦っておられます。

 

一方、私は私で、現在の状況をかみ砕いて患者さんにお伝えするのが今の仕事だと思いますので、最近患者さんから聞かれてお答えしたことを、ここでまとめてみたいと思います。

 

以下は、2020年4月27日現在の状況に基づいたもので、私の個人的意見を含みます。

 

マスクの効果はあるのか、布マスクは役立たずなのか

→ 役立たずではありません。

確かに、自らの感染を防ぐ効果は低く、N95マスク>>不織布のマスク>布マスク、という順番です。

しかし意味がないわけではありません。

「感染した人が周囲に飛沫を広げることを防ぐ」こともマスクの大事な目的で、
国民すべてに配ることには一定の理があると思います。

 

また、不織布のマスクが買い占められて医療機関ですら不足する状況であった中で、たとえ布マスクであっても大量に配布されることにより、一般のマスク需要を減らし、不織布のマスクが医療機関に流れるようになったという効果も確かにあったと思います。

 

一つ思うことは、こういう作戦が、未知の状況で苦肉の策として上げられ、決断されたということです。

 

提案・決定した官僚の人も、作った工場の人も、もちろん、布マスクの効果が低いことも、おそらく批判されることも分かっておられたと思うのです。


しかし、他に策のない限界の状況で、すこしでも効果があることを考え、このような決断をしたのでしょう。文句を言うのは簡単ですが、気持ちを込めた決断だったのであろうと推察します。そのこと自体に拍手を送りたいと思います。

 

学校の休校は今後どうなるのか

→ もうすぐ結論が出るでしょうが、再開するという決断は困難だろうと思います。

そもそも学校の休校は感染拡大を防ぐのに有効だったのか、ということになると、今のところ、はっきり効果を示したデータはまだありません。

 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32272089/

(リンク先は論文で、忽那賢志先生が紹介していたものの中の一つです。死亡率2-4%は押し下げたが、他の方策よりは効果が低かったという結論。ただ、上記の通り、結論を出すにはデータはまだ不十分です。)

 

専門家も推奨していたわけではありません。私も聞いた時には、それはやりすぎだなあと思いました。

しかし、先んじて手を打つことを良しとするなら、たとえ勇み足であっても許容しなければなりません。

 

ともあれ、効果はまだ?ですが、効果が低そうだから学校再開しますね、とは簡単に言えないと思います。それは、国民全体に、もう大丈夫そうだな、という意識を与えかねないからです。

 

そういう意味で、科学的にどうかは不明であったとしても、政策として再開してよいかと言われると疑問です。私ならもう少し休校のままにして、「学校は再開するけど外出はまだまだ危険だ」というメッセージをしっかり発信してからのほうが良いかな、と思います。

 

ワクチン接種のために受診するのが怖いと感じる方々

→ お気持ちはよくわかります。しかし、滞りなく接種するほうが良いと思います。

可能な限りの対策はしますので、ワクチンはしっかり接種してゆきましょう。

逆に、コロナウイルスを恐れるあまり、まったく予防接種を開始できていないという子が多くいるのではないか、ということを危惧します。


リスクの大きさが全く違い、ワクチン未接種のほうが危険だ、ということを、改めてお伝えしたいと思います。

 

同じように、病院に行くのが怖くて妊婦検診を受診していないということはないでしょうか?こちらも、受診しないことのほうが大きなリスクです。

 

この文章を読んでいらっしゃる方にはこのような方はいないだろうと思いますが、もしお近くにいらっしゃったら、医師としてはこのような意見であることをお伝えいただけたらと思います。

 

ウイルスは中国で兵器として研究されていたものが流出した?ノーベル賞の学者も言ってたらしい。

→ 否定されています。

これを言ってるノーベル賞の人は、賞を取った後にオカルト系にはまってしまったという、いわくつきの人らしいです。
(同じくノーベル賞の本庶佑先生が言ってるという偽情報もあるそうですが、あの先生がそんなこと言うわけが、、、)

 

ウイルスの遺伝子配列はすでに解読され、情報はオープンにされています。
痕跡を残さずに遺伝子を改変することは不可能ですが、このデータにその痕跡はありません。また、これまで知られていたコロナウイルスからの変異箇所は多く、研究で扱える量ではありません。

 

SARSコロナウイルスでも、2009年の新型インフルエンザウイルスのときも同様の人工ウイルス説がありました。

このようなデマは、世の中が大きく動くと必ず発生するものです。冷静に無視しましょう。

 

国のトップがこのようなデマを信じてしまっていそうな、あるいは、国民の不安をそらすために利用していそうな、そんな国もありますが、日本のトップ層からそのような声が聞こえてこないのはよかったです。

 

日本でPCR検査実施数が少ないのはよくない?症例が見逃されているのでは?

→ データを見る限り、適切に実施されている地域が多いと思います。

適切に実施されているかどうかの指標の一つとして、検査をしたときにどれくらい陽性になるか、という点があります。

これが高すぎると、見逃している患者が多いのではないかと考えられますが、京都も含めて多くの地域では10%以下であり、検査をやりまくっている国とくらべてそれほど変わりません。

 

ただ、東京での陽性率はかなり高くなっており、検査能力がかなり不足しているものと思われます。

 

これまでの経緯として、初期の段階では能力的にできませんでした。普段ついている予算が少なく、人員も少ないからです。無茶はできません。

 

また、このウイルスの特徴として、軽症者が非常に多いということがありましたから、検査を多くすれば軽症者を多く発見してしまい、医療が持たなくなることが確実視されたから、という理由もあります。

 

もう一つ、正しく検体を採取するのは意外に難しく、PCRがいかに高感度とはいえ、見逃す可能性がかなり高い(5割くらい)ということで、本当はウイルスがいるのに、陰性と判定されて外出してしまうケースが増える、ということも懸念されました。

 

こういった理由で、いきなり検査数だけを増やすのではなく、怪しい人はすべからく休む、医療は重症者の発見に徹しつつ、リソースを維持することに注力する、という作戦が行われており、この考え方は全く正しいと思います。

 

とはいえ、東京では患者数が爆発的に増えており、このような制限をしたとしても、PCR検査能力は足りていません。

 

これからも戦いは長く続きますから、その中でPCR検査をもっと簡単にできるようにしたり、もっと簡単な検査キットを開発したり、といったことが必要ですし、
すでに多くの企業が開発をしていると思います。

 

また、平時から検査能力を蓄えておくのも大切ですが、お金の問題だけではなく、このような検査ができるような研究室を作るのは、社会的に結構大変だったりします。

 

検査技師さんを増やして訓練をして、お給料をだして、ということも含めて、平時からどこまでやっておくか、これから様々な意見がでることでしょう。

 

自己検査できるようになればいいと思いませんか?

→ PCR検査にしても、ほかの検査であっても、仮に簡単にできるようになったとしても、自分で検査できるようにはしないほうが良いです。

インフルエンザでよく同様のことが言われます。妊娠検査薬のように買えるようにすればよいのに、という意見です。それができる国もありますが、その国なりの事情というものがあります。

 

インフルエンザであっても新型コロナウイルスであっても、妊娠検査薬と違うのは、感度が低いということと、検体の採取がとても難しいという点です。

鼻の奥(上ではなく、のどの部分です)の粘膜にスワブをこすりつけないと採取できませんが、自分で採取することは困難で、私も自分ではできません。

 

もともと、見逃しの非常に多い検査なのです。

 

それで結果が陰性となって、ウイルスを持った人が堂々と外出、出社、登校、などされますと、目も当てられません。検体の採取は慣れた他人にやってもらうのが良いです。

 

つい最近も、某Rという会社が自己検査キットを市販しようとしていましたが、いったんストップがかかったようで、界隈では一同胸をなでおろしました。

 

血液検査ができるようになったんですか?

→ まだまだこれからです。

我々の体の免疫能力の一つに「抗体」という蛋白質があって、病原体が入ってくると、それを認識できるものが個別に増幅し、病原体に対抗しようとします。
(ちなみに、どうして人間の遺伝子は有限なのに、無数にある病原体の認識パターンを持てるのか、というのは、本庶佑先生の研究成果であり、自分としてはノーベル賞の授賞理由となったオプジーボよりもこちらの印象のほうが強いです)

 

これを利用したのが、病気のデメリットを抑えつつ抗体を増やす作戦、つまりワクチンですね。

 

ともかく、血液検査をすることで、「新型コロナウイルス」を認識できる抗体がたくさんあれば、過去に感染したことがあるとわかる、であるとか、抗体がたくさんあれば、これからは感染しないといえる、とか、そういうことが血液検査には期待されています。

 

しかし、抗体検査はまだまだ準備ができていません。ぱっと挙げただけでも、以下のような問題点があります。

 

  • 検査キットを提供する会社がでてきているが、各社どれくらいの精度なのかわかっていない。新型コロナウイルス抗体だけに反応すると謳っているが、本当にそうか。

コロナウイルス自体は風邪のウイルスの一つで、多くの人は抗体をもっているはずてす。ですから、新型のコロナウイルスだけを認識する抗体を検出できなければ役に立ちません。陽性になったとしても、それはコロナウイルス全部を共通認識する抗体かもしれません。

  • どれくらい抗体がいたら「感染した」といえるのか、データがない。

感染していなくても、抗体は少量は検出されてもおかしくないので、たくさんの感染が分かった人と、たくさんの感染していない人の両方に検査を行ってみて、データの違いを見比べる必要があります。まだ行われていません。

  • どれくらい抗体がいたら「これからは感染しない」といえるのか、データがない。

長年のデータを蓄積していって判断するしかないものです。
また、コロナウイルスがインフルエンザウイルスのように変異を繰り返すウイルスであれば、いっとき抗体があったところで、それが翌年のウイルスにも有効とは言えない、という可能性もあります。

  • 初期には陽性にならないため、早めの検査には不適

研究と称して有料で検査を行ったクリニックが新宿にあり、抗体陰性で安心したのに後にPCRで陽性になった、という人の話がありました。抗体検査とはそういう性質のものです。

 

厚労省は医療従事者を中心に血液検査(抗体検査)を順次行っていく方針を示しています。それ自体はぜひ速やかに行うべきですが、検査に期待するというより、どれくらいの精度があるのたまず確かめてみる、データを蓄積する、という意味合いが強いと思います。

 

また、いくつかの報告で、「検査してみたら抗体を持っている人がとても多かった!」というものが出ています。

本当であれば良い方向の報告(軽症者が多い=死亡率が低い、意外に早く抗体ができて終息にむかう)なのですが、上記のような考えで、現時点では評価を保留しております。

 

アビガンが有効だって話ですが、検査して陽性者にアビガン使えばすむ話ではないの?

→ 問題山積です。

TVのコメンテーターでそう発言する人がいらっしゃるようですが、まず、効果があるのかないのかよくわかっていません。


「わからないならとりあえず投与してみては?」「重症患者にそんなこと言ってられないでしょう」という意見のかたもいるようですが、わからないというのは、「0か100か」わからないのではなく、「-100か+100か」わからないのです。

重症患者に投与して、回復するかもしれませんが、逆に死を早める結果になるかもしれません。そんな薬は安易に投与できませんよね。

 

いま、100以上の薬について検討が始まっています。その中にはいくつか有望なものもあります。

アビガンも、有効であるという結果がでる可能性もありますが、そうなった場合も、アビガンには強い催奇形性がありますから、やはり、安易に使えるようにしてよい薬だとは思えません。

 

例えば、サリドマイドという悪性腫瘍などに活躍する薬がありますが、この薬がかつて強い催奇形性で大問題になったことを、知らない、忘れている、という人も多いかもしれません。

 

薬の副作用というのは、大量に流通してから初めて発見される、ということが往々にしてあります。

検証の終わっていない薬や、副作用があるとわかっている薬を大量に流通させることは、いかに緊急事態であるとはいえ、慎むべきです。

 

個人的に、有効性があるだろうと思われるのは、回復者の血漿を投与する治療法(検証が始まっているそうです)や、血漿から抗体を取り出す方法です。

ですが、これらの治療には回復者の大量の血液が必要ですから、大量生産とか、簡単な治療には結び付きません。(「抗コロナウイルスモノクローナル抗体」とか、そういう方向に行けばいいなと思いますが、、、先は長いですね)

 

自覚症状のない人がいて、自宅待機の人はサチュレーション?を測るべきだとTVで、、、

→ 酸素飽和度(SpO2)のことだと思いますが、SpO2が低下しているのに自覚症状のない人は限られます。

初期の自覚症状がない時期にSpO2だけが低下することは通常はありません。
SpO2の低下とはすなわち酸素が足りていない状態ですから、息苦しさを必ず感じるはずです。

自覚症状がない、という場合は、もともと肺に持病のあるようなご高齢の方に限られると思います。

 

10万円もらえるの、どう思います?

→ もちろんもらって使います。国民全員がもらって、さっさと使い切るのが最善だと思います。

冗談ではなく、毎月10万円もらえるくらいでないと経済がもたないんじゃないかと思います。

 

お金持ちの人が「僕はいりませんからもらいません」とか言うのは、たぶんちょっと勘違いしてると思うんですよね。

 

医者が経済を語るのもおこがましいですが、これは自分のためにもらって嬉しい、という種類のものじゃないと思います。


「使った相手をすこし幸せにする、それをまた使ってもらって、その相手もまたすこし幸せにする」ためのものだと思います。

 

使わなかったら、だれも幸せにならないじゃないですか?


「公務員はもらってはだめ」「徴収します」「生活保護の人はどうこう」「政治家はもらわない」とか、そう考えるとナンセンスですよね。みんなもらってガンガン使いましょう。

 

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これのためにPCにメモリ増設しました。渋滞がひどい。