よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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第5波が怖いという話と、子どものコロナワクチンについて質問箱へのお返事

こんにちは。

 

高齢者のワクチンが済んで、オリンピックが来て、新型コロナウイルスもなんとなく終盤戦のような空気になっている気がします。

 

が、医療者はそう考えておらず、このままだと8月に来る(来るのは既定事項でしょう)次の波が大きなものになるのではないかと予想していて、お願いだから、頼むから、みんな他者との飲食を控えて、ワクチンを接種してくれと願っている、、、という、そんな話をここでさせてください。

 

それと大切なことなので冒頭で言っておきますが、新型コロナウイルスワクチンは妊娠中も接種推奨です。授乳中も接種推奨です。これらはワクチンの副反応にも効果にも影響を及ぼしません。

 

今後の見通しは以下のようになっています。

私見を含みますが、概ねコンセンサスが得られると思います。

 

・高齢者のワクチンが済んだので、流行の中心は20歳台~中年に。この世代は、重症化率は高齢者より低いはず。

 

・しかしデルタ株が蔓延してくるので、感染はこれまでの対策では抑えきれない速度で広がる。

 

・高齢者の感染は減るけれど、感染者数自体はこれまでと同等の速度で増えるのではないか。

 

・これまと比べると、高齢者が少ないぶん重症ベッドの埋まりは遅れるが、医療機関への負担は変わらない。これは、若年層は絶対に助けなければならないため。そして、おそらく経済的なインパクトがこれまでより大きくなる。

 

・重症ベッドの埋まりが遅れると、緊急事態宣言も遅れるのではないかという懸念がある。オリンピックの影響も。

  

以上のような考えで、感染者数が制御しきれなくなるくらい多くなるのではないか、という危惧をもっています。

 

いま高齢者のワクチンに目処が付き、まもなく終戦なんではないかという空気があるような気がします。しかし個人的には、このまま8月を迎えるのが怖い気持ちがあります。

 

ワクチンの副反応は色々と喧伝されていますが、データの筋が通った議論はほとんどありません。心筋炎はたしかに副反応としてありますが、自然治癒する範囲です。また、よく報道される接種後の死亡事例で、実際にワクチンに関連しているものはなさそうです(接種していない人の死亡率を上回らないからです)。

 

それと比較して、実際にコロナに感染した場合の後遺症は多岐にわたります。これから感染の中心が人生の長い若年層に移っていきますので、実際に感染した場合の後遺症の重大さは、更に増していきます。

 

 

いま、ワクチン接種について態度を保留している、私と同世代以下の方々。

第一に、日本は個人の意志が尊重される国で、ワクチン接種は強制されません。

その上で、接種したほうが望ましいと推測されるワクチンについて、不正確な情報を気に留めてしまい接種しないと判断される方が後を立たないことは、大変つらいものがあります。医療従事者として、わかっているけど止められないのは本当に辛いのです。

 

それと、大切なことなのでもう一度言っておきますが、新型コロナウイルスワクチンは妊娠中も接種推奨です。授乳中も接種推奨です。

 

子どものワクチン接種について
(なんでもしつもん箱へのお返事)

この記事を書いている時点で、12歳以上でワクチン接種が認められ、接種対象になっています。しかし大人の間でさえ態度を保留される方がいらっしゃる中で、子どもへの接種に戸惑われる方がでてくるのは当然でしょう。

この件についてちょうどご質問を頂いたので、併せてご紹介させてください。

 

コロナのワクチン接種について

12歳以上のワクチン接種券が届きました。子どもは小柄で、年齢の平均よりも10キロ以上軽く、年齢で区切って接種してもいいものか不安に思います。周りでも『大人は受けるけれど、子供は悩んでる』という声が多いです。先生のご意見をお聞かせ下さい。よろしくお願いします。

 

以下、私からのお返事です

こんにちは。

新型コロナウイルスのワクチンは新しいものですから、いくらかの不安がつきまとうのは仕方のない面があると思います。


さて、体重に関わらず年齢で区切って良いのか、というご質問です。ファイザー社の12歳から15歳を対象にした臨床試験の論文

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2107456

をあたってみましたが、参加者の体重についてのデータは見つけられませんでした。ですので以下は推測を含みます。

 

・臨床試験ではアジア系を含む12歳から15歳の参加者1000人以上に接種されています。免疫獲得の有効性は100%で、副反応の強さは成人と変わらないという結果でした。

・体重の詳細なデータはありませんが、少なくとも体重は対象から除外される条件にはなっていませんでした(小さい子もいただろうという意味です)。

・副反応の強さが年齢に(≒体重に)比例しているというデータはありません。もし体重が小さい方が副反応が強いなら、12-15歳の対象者はそれ以上の年齢と比べて副反応が強いというデータになっていたはずです。

・ファイザー社はすでに6ヶ月以上の小児を対象とした臨床試験もスタートしており、現時点まで特別な異常は報告されていません。

・そもそも一般的に、新生児を除いて、体重と免疫反応の強さに関連はないと思います。

以上のことから、体重に関係なく接種して良いだろうと考えます。

 

 

もう少し申し上げますと、周りの方の「子供は悩んでいる」という意見に代表されるように、結局のところ「未知のものを子供に与えるか」という根本的な気持ちの部分が影響しているようにも思います。

そういった場合は、仮に体重が平均的であったとしても、他の理由で悩んでいたかもしれません。

気持ちの部分で悩んでいらっしゃる方について、説得したりするものではないのですが、効果と安全性が数学的に示されたものについて、それ以上に悩む必要はあまりないと思います。

順番がきたら、粛々と接種して良いでしょう、というのが私の意見です。

 

 ・・・という私の意見をご紹介させていただきました。説得するものではありませんが、私見としては単純明瞭で迷うところはありません。

 

……………

 

例えば太平洋戦争のとき、いくらメディアも世論も戦争を支持していたとしても、データを見れば明らかに日本が破滅するとわかっていた人はいたでしょう。ワクチンについて言えばこれも古くから、なぜかデータがおろそかになりがちで、後から見れば間違った判断がされてきた過去があります。

 

そうした視点では、データだけで世の中を動かすのは難しいことだなあと感じますし、実際データだけでは不十分なのでしょうが、それでも「いま多数の専門家のコンセンサスが取れている意見はこういうものです」というご紹介を繰り返していくことは、私達の職業上の務めの一つだと感じています。

 

ときにお互いにたいへん消耗したり傷ついたりすることもある分野で、できるだけ配慮しながらお話するのですが、どうかここで私が危機感を持って、このように記事を書くことをご理解いただきたく思います。そして、すこしでもワクチン接種率が少しでも上がるようにと願っています。

 

※このように意見表明をしつつも、当院で新型コロナウイルスの予防接種を行う目処は現在のところ立っておらず、申し訳ない気持ちでいます。しかし今後とくに低年齢層へのワクチン接種が始まるまでには、なんとか場所を提供できるようにと考えております。