前回までは、気管支喘息とはどういう状態か、喘息発作が起きたときはどう治療するのか、また、発作をそもそも起きないようにするための長期的な予防治療について、お話ししてきました。
気管支喘息ってどんな病気?(1)喘息発作の治療 - よしだこどもクリニックのブログ
気管支喘息ってどんな病気?(2)喘息の長期的な予防 - よしだこどもクリニックのブログ
とくに乳児期の長期予防については、「喘息」とははっきり言われずに、「喘息の気がある」などとして、「オノン(プランルカスト)、キプレス・シングレア(モンテルカスト)」の処方をされる、というケースもあるかもしれません。
個人的には「喘息の気がある」という言い方はあまりしないのですが、この言葉を使わずにわかりやすい説明をできているかどうかは、自信をもっては言えません。なぜこうはっきりと言われないことが多いのでしょうか。
乳児のゼイゼイのその後 3パターン
非常に簡単に言うと、乳児期のゼイゼイのその後には以下の3パターンがあるのではないかと、言われています。
1 かぜ(ウィルス感染)のときに頻繁にゼイゼイというが、それは気道の細さや筋肉の弱さといった個別的な理由によるもので、3歳くらいまでに、かぜをひいてもゼイゼイ言わなくなるパターン。
2 乳児期にかぜ(RSウィルスなどのウィルス感染)にかかったあと、気道の粘膜が過敏になっていると推測され、3歳をこえて6歳くらいまでは、ゼイゼイが繰り返すパターン
3 ダニやホコリに対するアレルギーがあり、これに気温や気圧、ストレスなどの環境要因が重なって発作に至る、いわゆる気管支喘息のパターン
(出典)診断、鑑別診断、病型分類 | 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン ハンドブック2013 ダイジェスト版 より加工
乳児のうちは、ゼイゼイということの殆どは、かぜ(ウィルス感染)に続発して起きるものです。ゼイゼイといっているときの状態は(微妙に違うのですが基本的には)喘息と似た病態であると解釈され、喘息発作と(微妙に違うのですが基本的には)同様に、気管を広げる薬などで対応します。
そして、このようなゼイゼイを繰り返す場合は、(2)喘息の長期的な予防でお話したのと同じように、長期予防内服やステロイド吸入の提案をすることになります。
このように、乳児期の感染に伴うゼイゼイに対しては喘息と同様の薬剤を使用する場合が多いです。
このときに「気管支喘息の治療を併用しますね」と言いますと、患者さんは「3のパターン」の気管支喘息を想像され、将来に渡って喘息の治療が必要な子どもであると思われるかもしれません。「エッ、うちの子は喘息なのですか?」と仰られることをよく経験します。ですが、ゼイゼイがその後いつまで繰り返すのか、上記の1〜3のどのパターンとなるのかはこの時点でははっきりとは確定できないのです。
気管支喘息という言葉を使うと、保護者さんを驚かせてしまうかもしれませんし、上記の1〜3のパターンの説明が必要になってしまいますから、それを省略する意味もあり、あまり乳児期から「気管支喘息」と明言せずに、「喘息の気がある」という言葉が使われるのだと思います。
「喘息の気がある」とは、乳児期に風邪をきっかけにしたゼイゼイがあったり、それが繰り返したりしたりする子どもさんに、喘息の投薬をしたい。ただ、将来的にもこの症状が続き気管支喘息になるかどうかはわからない、おそらく可能性は低い。そんな子どもさんの状態を、とりあえずご説明するときの言葉だと思います。
先に述べたように、個人的にはこの言葉をあまり使いません(使うこともあります)。「気がある」といってぼかすよりも、「喘息症状を呈しがちな子どもさんだけど、短期間でよくなることも多い」という上記のような説明を、省略しないほうがわかりやすいかな、と、これは個人の考えなので色々と医師によって考えが違うと思いますが、自分ではそう思っているためです。