こんにちは。
僕はものすごくウィルスに弱くて、患者さんからすぐに風邪をうつされてしまいます。
いつもマスクとゴーグルをつけて診察させていただくようにしているのですが、そのせいで、健診などで患者さんにお会いすると、かえって誰だかわかってもらえない、みたいなこともあります💧。
さて、前回、市販のこども用かぜ薬ってどんな中身なんだろう、というようなことをチラッと書きましたが、そのことをもう少し書きたいと思います。
市販の子ども用かぜ薬の成分
記事を書くにあたり、市販の子ども用かぜ薬、おもにシロップの薬にどんなものがあるか、何が入っているのかを調べました。
今回調べたのは、顆粒剤2種類、シロップ剤10種類の、合計12種類です。
このうち、ムヒが5種類、キッズバファリンが4種類で、これらのブランドでは症状によって処方が細分化されているのがわかりました。
有効成分はほとんど共通していて、主に以下の5つでした。
これら以外の成分も製品によって色々ありますが、薬効にはあまり影響がないと思われます。
最初に、銘柄ごとに入っている成分を表にまとめてみたものを示します。製品のネーミングには法則性があるようですね。
では、それぞれの成分について、簡単に説明をしてみます。
アセトアミノフェン
解熱・鎮痛の薬です。医師も一番よく使う、標準的な薬ですね。
医薬品としては、カロナール(R)、コカール(R)といった内服や、アンヒバ(R)、アルピニー(R)といった座薬に入っています。
市販薬を内服するときは、頓服ではなく1日3回の服用となるわけですが、
安全性も高く、問題ないかなと思いました👌。ただ、病院で処方された解熱薬と同時に使うと使いすぎになってしまうので注意が必要ですね。
クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン
これらは鎮静性抗ヒスタミン薬といって、鼻水を減らすために配合されています。
この成分が入っていない子ども用かぜシロップはありません(❗)。
医薬品でいうと、ポララミン(R)、ペリアクチン(R)、テルギン(R)、という薬の成分です。
しかし、現代の小児科医は、この成分を小さい子供には使いません👶。
使われない理由は、以下のような副作用があるためです。
・分泌物が粘凋になり、痰が出しにくくなる
鼻汁も粘凋になりますし、かぜの時に良い効果ではありません。
・脳の機能が抑制される。
結果として、眠くなり、認知機能が低下します
また、脳の神経が不安定になる結果、熱性けいれんが起こりやすくなります🚑。
ですから、とくに発熱がある乳幼児に処方することは避けますし、
過去に熱性けいれんになったことがあるお子さんは、この成分の入った市販薬を内服しないほうが良いと思います。
私も、この成分は極力つかわない、もし使うとしても、原則的に3歳以上の子どもに使います。
それ以下の患者さんに使いたいときには「非鎮静性」抗ヒスタミン薬といって、副作用の少ない世代のものを使うことがありますが、これもちょっとむずかしいところがあり、、、。
この成分を風邪には全く使わない医師もいらっしゃいますし、現代の小児医療ではそれが正道だと思います。
デキストロメトルファン
これは中枢性鎮咳薬という薬で、医薬品でいうとメジコン(R)に当たり、「何はともあれ、とりあえず咳を止めてしまう」という効果があります。
良いことのように聞こえますが、咳が出せなくなった結果、痰が吐き出せなくなるので、気道の感染症としては、悪化する可能性をはらんだ成分です。
かぜの乳幼児に対しては、小児科医が処方することはあまりないでしょう。
メチルエフェドリン
エフェドリンは、気管を拡げたり、充血を止めたり血圧をあげたりする成分で、メチルエフェドリンはエフェドリンの効果を弱めたものです。
これらは漢方治療で古来から用いられてきたマオウ(葛根湯、小青竜湯、麻黄湯などに含まれる)の主成分です。
咳止めの効果はありませんが喘息には有効で(ただし現代では用いられません)、鼻づまりにも効果があります(花粉症の治療薬などに用いられます)。
それよりも、心臓の動きを活発にし、心身を元気にする効果のほうが、かぜ薬としては有用かもしれません。このような効果のためにスポーツ選手のドーピングにも用いられてきた薬剤です。
一定の効果が見込まれますが、興奮や高血圧などの副作用があるため、医師としては乳幼児に安易に用いるのは避けたい種類の成分です。しかし、量的にも葛根湯を与える場合とほとんど変わらないようですし、そう考えれば安全性には問題ないでしょう。
市販の子ども用かぜ薬をどう使う?
子ども用の市販かぜ薬の中身は、このようになっていました。
小児科医としては、特定の状況においてのみ使ってほしいなあ、あまり続けて使ってほしくないなあ、と思われる成分が入っていることは確かです。
しかし、だからと言って全く使ってはならないわけではなく、とにかく症状(とくに鼻水)が強いけどすぐに病院に行けない、というときに一時的に使うのは良いのではないかと思います。
ただし、乳幼児に使う場合はやっぱり怖いなと思うところもあり、
・高熱のときに、クロルフェニラミン・ジフェンヒドラミンは使用しないでほしい(とくに、けいれんの既往や家族歴のある方)
・痰が多いときやゼイゼイと音がするときに、デキストロメトルファンは使用しないでほしい
などと思う次第です。
今回まとめてみて思いましたが、これなら葛根湯や小青竜湯のほうがまだ安心して使えるのではないかと思ってしまいました💊。しかしこれらは苦くて乳幼児に内服させるのはなかなか困難なのであります。