よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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インフルエンザの治療薬について

インフルエンザについて、前の記事の続きです。

これは個人の考え方ですので、医師によって判断の異なるところはあろうかと思います。

 

(1)迅速検査について(前の記事)

(2)治療薬について(この記事)

 

インフルエンザの治療

 

インフルエンザは、必ずしも治療薬を使う必要はなく、自然に解熱を待つ選択も十分ありえる病気ですが、


リスクの高い患者さん(乳幼児妊婦(・授乳婦)、糖尿病や腎疾患など基礎疾患のある患者さん)には積極的に治療を行います。

 

とくに授乳婦さん、授乳中でも全く問題なく治療可能ですし、授乳に生活に大変なところですから、症状を早く抑えることは大きな意味があると思います。症状がつらいのでしたら、我慢しないようにしてください。

 

一方で、そうではない患者さんの場合は、治療薬を用いるかどうか、症状の程度も考えつつ患者さんごとに考え、相談させて頂くことがあります。

 

治療薬の選択

治療薬にはいくつかあるのですが、これまでの研究データや状況を踏まえ、当院では特別にご希望のある場合を除いて、基本的にタミフル(内服薬・1日2回 5日間)、リレンザ(吸入薬・1日2回 5日間)のいずれかを処方することにしています

 

そのほかの治療薬としては、以下のようなものがあります。

 

新薬 ゾフルーザ(内服薬・1回)はどう?

1回の内服で治療が完了するということで、話題にもなっている新薬です。


そう聞くとなんだか、効果が高いように思えてしまいますが、データをみる限り症状緩和効果はタミフル内服とまったく同じです。

 

話題の薬を使ってみたい気持ちもあるのですが、いくつか問題があります。

・発売されたばかりで副作用のデータ蓄積が少ない

12歳未満に使った場合の効果・安全性データがない

・顆粒製剤が無い(来シーズン登場見込み)

・小児科学会がまだ推奨していない

・薬価が高い(タミフルの7割増)

という理由で、当院では少なくとも今シーズンは使用しない予定でおります。

 

内科を中心に、今シーズンから使い始める医師も当然おられますし、それはそれで問題のないことだとは思いますが、個人的にはすこし保守的になってデータが溜まるのを待とうと考えております。

 

 2019/1/12追記
ゾフルーザはウィルス排出の抑制がタミフルより早いのですが、そのことに意味があるのかどうかは分かっていません。

ワイドショー番組などで、ゾフルーザにより、早くウィルスが減るので他人に感染させる率が下がる、と誤解させるような情報が流れていたようですが、 現時点では、そのようなデータは確認されていません。

このようなデータは日進月歩でアップデートされるので、その時点で最適な治療を選択すべく、新しい情報にキャッチアップしていきたいと思います。

TVでも、専門家の監修をうけた、正しい情報が伝達されるとよいのですが。。。

 

イナビル(吸入薬・1回)

イナビルは、1回の吸入で治療が完了するので、とくに成人でよく用いられる治療法です。


しかし、吸入操作がやや煩雑で、小児においては逆に、吸入失敗のリスクがあります。


また、これは確定したお話ではないのですが、イナビルの症状緩和効果を疑問視するような、海外での臨床試験結果が存在することもあって、吸入薬ではどちらかといえばリレンザ(吸入薬・1日2回5日間)を処方しています。

  

タミフルの副作用の話はどうなったか

異常行動との関連性が疑われて、10歳台への使用が控えられてきたタミフルですが、結論としては、タミフルと異常行動には関連性がありません。

 

そのようなデータが十分に蓄積されたと判断して、使用差し控えの判断が解除されました。現在は、年齢にかかわらず処方を行うことに問題はありません。

 

よって、当院でも年齢にかかわらずタミフルを処方することがあります。

 

ではあの異常行動は何なのかというと、インフルエンザの症状の一つといってよいでしょう。

 

タミフルを使う・使わないにかかわらず、同じ確率(10%程度)で、何らかの異常行動を伴う、多くは発症後2日以内、とされていますので、患者さんを看護する方は引き続き注意する必要があります。

 

 

 

最近読んだ本

 

「この世界の片隅に」を読んでいました。原作の漫画のほうです。

じつは、あれだけ話題沸騰となった映画のほうを、まだ観ていないのです。

 

通勤中、スマホの漫画アプリで何気なく読んだのですが、ガーン、と思いました。こんな作品に目を通していなかったとは、なんという不覚。

 

なんとなく、戦時中の歴史風俗記録的な作品なのかと思っていたのですが、違いました。主人公すずさんの人生の描写であったわけであります。

 

細部に宿る魂のような描き込み、登場人物の思い、意外に山あり谷あり、一周まわって多分落ち着くところに落ち着いた物語、ラストの持っていき方の上手さ。

 

これは作者の人生をぶつけた作品で、スマホの小さい画面で読むものではない、紙の本で入手せねばならぬ、と思いまして改めて買ったわけでした。

 

、、、まだ映画の方は観ていないのです。いつか時間をつくりたいです。

 

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

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