よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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質問箱のご質問へのお返事(小児のコロナワクチンについて)

こんばんは。

毎日、新型コロナウイルスの検査が多くなっています。
どんどん増加傾向ではありませんし、そろそろピークなのかな、と思いますが、先は見えません。

迅速検査キットも底をつきそうですが、来週には状況が好転していてほしいものです。


院内で核酸検査もできるように機械は用意しましたが、こちらの試薬も不足して実施できておりません。なお補助金申請を忘れてしまい、かなり凹みました。

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という中で、小児の新型コロナウイルスワクチンについてご質問をいただきました。メールアドレスの記載がなく、公開しても構わないということでしたので、こちらでお返事いたしますね。

ご質問の内容は以下の通りでした。

子どもへのコロナのワクチンの年齢が引き下がりましたが、5歳であってももう粛々と順番が来たら接種して構わないんでしょうか。


子どもが接種して重篤な状態になったという例があるのに公になっていないのよ、とワクチン反対派の友人が言っています。コロナ禍から様子が変わってしまった友人なので、どこデータ?と掘り下げるのも怖くて真相を確かめられていませんが、そういったデータはどこで調べたら良いのでしょうか。


コロナに限らず、どんなワクチンもメリットとリスクがあると思っています。でも、メリットが上回るからこれまでの他のワクチンは接種してきました。ただ、コロナにおいては子どもは重症化する例が少ないのであれば、メリットとリスクの天秤はどうなるのでしょうか。


5−11歳の子どもへのコロナワクチン、どう考えたらよいのでしょうか。

ご友人の件は致し方ないとしまして、確かに小児のワクチンは高齢者や成人と比べるとメリットが小さくなっているので、議論が起きているところだと思います。


デメリットに関しては、重篤な状態になることが多い、という情報はありません(あったのに公にならない、ということはないと思います)。

とくにオミクロン株との関係性についてはまだ不十分な情報しかありませんが、厚生労働省のWebページ、日本小児科学会のWebページをご参考になさってください。
www.jpeds.or.jp


まれに心筋炎が起きているようですが、軽微なもので全員自己回復しています(このワクチンで特別に多いのかどうかはまだはっきりしていません)。

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一方のメリットに関してです。

1 発症率が下がる効果
2 入院率が下がる効果
3 死亡率が下がる効果
4 周りの人に感染させない効果
この4つがありますね。


1はオミクロン株になってからだいぶ下がりましたが、公式な信頼できる数字はまだないと思います。個人的な推測で恐縮ですが、発症予防効果については50%台、インフルエンザワクチンといい勝負、という感じで大きく外れてはいないと思います。
2/18追記:成人のデータですが、3回接種が済んでいる場合、オミクロン株で発症するリスクが約1/3に減少します。これはインフルエンザワクチンと同レベルの効果です。(2回接種のみではここまでの効果が得られていないので、2回しか接種していない成人はぜひ3回目を接種していただきたいところです。)

2や3については、「そもそも重症化することが少ないのだから、子どもでは気にしなくてもよいのではないか」という意見があります。


いくらほとんどが軽く済むとはいえ、インフルエンザよりは重篤化しやすいと思います。これは実際のウイルスそのもののこわさというよりも、いままで全く感染したことのないウイルスに感染することはそれくらいのダメージがある、ということと、そもそも感染者数が莫大なのでそれだけ重症者の人数も増える、という二つの理由があると思います。


また、新型コロナウイルスは後遺症の部分がまだ不明なので、感染するとしてもワクチンで十分和らげたあとのほうが望ましい、という考えもあります。

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感染してもOKで風邪と同じだよ、という意見もたしかにあり、私も遠からずそうなると感じていますが、それはワクチンまたは感染で免疫を持った人にとってはそうであっても、ワクチン未接種で未罹患の人にとっても同じといえるかどうか、結論を言うにはまだ時期尚早だと思います。少なくとも現段階のデータだけでは、そのような断言はしかねます。


4については非常に難しいところです。日本の考え方では、本来のワクチンの目的に4は含まれません。1~3だけで十分にメリットが上回るかどうかを判断すべきです。しかし現実的な話として、ご高齢の方、基礎疾患のあるかたのご家族であれば、こういった視点が判断に入ってくるのはやむを得ないと思います

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オミクロン株になってから不確実な部分が大きいのですが、私の意見としては、接種するメリットが上回ると感じます。自分の子どもだったら何のためらいもなく接種しているでしょう。

しかしそれはデルタ株以前の圧倒的な推奨度合いとは異なります。また、オミクロン株であっても未接種の高齢者には強く接種を推奨するところ、小児に対してはやはり推奨度合いが異なります。そういう部分で議論が起きることは自然かなと思います。


(追記)大事なことですが、次の波、次の変異株が、現在の株よりずっと重症化しやすい、という可能性は忘れないでください。

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迷っていらっしゃるところ、何か決定的な意見を言えるわけではありませんが
(オミクロン株に対しては)インフルエンザワクチンと同じ程度のメリット・デメリットで捉えていただければよいのではないかと思います。