よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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新しい9価のHPVワクチン(子宮頸がん)

こんにちは

今日は、HPVワクチンのお話をしたいと思います。

2018年に京都新聞山城版のコラムに書かせていただいたことがあります。
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その続きで、このブログにも自分の思いを書かせて頂いたのでした。
HPVワクチン接種をお勧めする話 - よしだこどもクリニックのブログ



それからもう3年、まだ接種される方は我々が期待するほど多くはありませんが、自治体からの連絡を再開していただけるなど、風向きは確実に良い方向に変わってきていると思います。


HPVワクチンの効果について

子宮頸癌は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルス感染が原因です。
HPVには200以上の種類があり、性交によって感染します。女性の80%、男性の90%が、一生に一度はいずれかのHPVに感染します。風邪のように非常にありふれた感染症です。


この200以上のHPVのなかには、とくに子宮頸癌を起こしやすいタイプが存在します。16・18型の上位2種類だけで子宮頸癌の60%、上位9種類で子宮頸癌の85%を占めます。


ということは、ワクチンでこれらの型の感染をあらかじめ防ぐことができれば、子宮頸癌を60%, 85%減らすことができるのです。


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画像は「みんパピ!」様から引用させて頂きました。
9価のHPVワクチンってなに? | みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト


子宮頸癌は、25~45歳という比較的若い年齢層に多い癌で、小さな子どもから母親を奪う、悲しい経緯をたどることが多い病気です。
年間1万人がり患し、3,000人が死亡する癌ですから、これを85%減らすことができるとすれば、素晴らしい予防法であると思います。


「子宮頸癌は検診で発見できる」という意見があり、たしかに検診は今後も重要なのですが、ワクチンの利点は検診に比べて非常に大きいものです。


・検診で精密検査にまわった時点で、癌でなかったとしても不利益があります。
子宮頸癌には、その前段階である「前がん病変」が存在します。
検診で「異常っぽい細胞が疑われる」と、円錐切除術といって、子宮口を切り取って病理診断を行い、子宮頸癌といえるのか、まだその段階に至っていないのかを判断することになります。
円錐切除術を行うと、それだけで流産、早産のリスクが上がります。


・癌と確認されれば子宮摘出手術が行われることが多いでしょう。
これは見方を変えれば、将来うまれるはずだった子どもの命を未然に奪っている、とも言えます。

そもそも子宮頸癌を起こしやすいHPVに感染しなければ、このようなリスクを根本的に減らすことができます。それがワクチンです。


子どもが年間80万人しか生まれなくなっているこの国で、こんな損失がスルーされている現状は、とても不自然だと常々思っています。
子宮頸癌ワクチンは定期接種で、小6~高1の女性は無料で接種することができます。また男性であっても、高2以上の女性であっても、自費でいつでも接種していただくことができます。


HPVワクチンが本当に子宮頸癌を減らすかどうかについては、事後の検証には当然ですが時間がかかっておりました。
しかし順次「前がん病変」を減らすというデータが出てきて、最近「子宮頸癌を減らす」というデータが出てきているところです。


スウェーデンのデータで「上位2種類に対するワクチンで子宮頸癌63%減」という報告がでています。上位2種類が子宮頸癌の原因となる割合にちょうど等しいですね。

新しい9価のHPVワクチン「シルガード9」

現在日本で定期接種として承認されているのは、上位2種類を防ぐワクチン(サーバリックス、ガーダシル)です。ガーダシルはさらに尖圭コンジローマを起こしやすい2種類の型を加えて、合計4種類のHPVに効果があります。



海外では、さらに上位9種類を防ぐワクチンが標準となっていましたが、日本でもようやく今回使用できることになりました。


それが新しく販売が開始された「シルガード9」です(名前からも4価のガーダシルを9価に増やしたもの、ということがわかりますね)。以前のワクチンにおいて副反応が社会的に問題視されたことを踏まえ、接種された方は個別にWeb上で登録が必要となっています。


小6から高1の女性は、定期接種として「ガーダシル/サーバリックス」が無料で接種できますが、シルガード9をご希望の方は、自費での接種となります。


接種前のご説明と登録に時間がかかるため、当院では当面の間、土曜日の午前に接種日を設定させていただいております。
費用は税込みで1回30,000円(×3回接種)とさせていただきました。

ご希望の方は診療時間内にお電話にて問合せください。



男性のHPVワクチン接種について
こうして子宮頸がんを中心にお話ししてきましたが、他国をみると男性も接種対象となっている国が多いです。それには、以下のような理由があると思います。

・ワクチンに含まれる型のHPVは、子宮頸がん以外に、肛門がん、咽頭がん、口腔がんとの関連が示唆されていること

・尖圭コンジローマの原因となること(サーバリックスにはこの型は含まれません)

・当然ながら女性には男性を介して感染すること(これが一番重要だと思います)
子どもが男の子であったとしても、そのパートナー・結婚相手の子宮頸がんのリスクを下げることは、とても大切なことだと思います。

残念ながら日本では男性の接種は公費負担がありませんが、自費接種は可能ですので、ご希望の方は電話にてご連絡ください(Webからは予約できないかもしれません)。

以前言われていた副反応?について

激しい痙攣、計算ができない、記憶力障害、、、といった内容がセンセーショナルに報道で紹介された時期がありました。
しかしこれらの症状は心因性のものであったり、ワクチンに関係なくこの年齢層に普遍的にみられる症状でした。


そのことはデータがすでに証明しています。しかし、一般の方々に植え付けられた何となく怖い、という意識は、まだまだ払拭できておりません。
(なんだか最近新型コロナウイルスワクチンでも同じようなことをかいたような、、、まあ、そういうことです💦)


しかし冒頭に書いたように、定期接種対象者に連絡をいれる自治体も増えてきております。こういうことはゆっくりとしか進みませんが、いつか日本の女性とこれからうまれる子どもたちが、もっと守られる世の中になればいいなあと思っています。


最後に、個人的に私の子どもたちはどうなのかと申しますと
長男:ガーダシルを3回接種しました
長女:ガーダシルを3回接種しました。シルガード9を重ねて接種しようか、考えております。
次女:対象年齢ですがまだ接種していません。シルガード9を接種しようと思っています。保護者として、登録作業がどんなものか体験してみます。