よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです

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新型コロナウイルスのワクチンについて

こんにちは。とても寒い日が続きますね。

新型コロナウイルス(COVID-19)ですが、日本においては第3波の真っただ中ということで、医療崩壊という言葉もよく使われるようになりました。


当クリニックはというと、必要な対策をとりつつ、かといって焦らないように努め、波が過ぎるのを待っております。


実際にCOVID-19の診療にあたっている医療従事者の方々は心よりねぎらいつつ、自分の役割を守ることが大事だと考えています。


そんなこんなで、診療業務よりも書類と通達の束に埋もれて、なんとか必死に泳いでいる状態なのですが、関連するニュースのいくつかにはコメントをつけておかねばと思い、ここで書き始めております。

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コロナウイルスワクチンの開発は拙速?アレルギーが不安?

現時点で開発されたコロナウイルスのワクチンは、流通に課題を抱えつつも、効果と安全性については、十分な担保が得られているようです。


概ね90%以上のワクチン効果が得られており、これは例えばインフルエンザワクチンと比べるとかなり高い数字です。

流石に現時点で上市後の実際の効果について楽観的に考えるわけにはいきませんが、安全性のデータを含めて、良いニュースだと感じます。

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ワクチンが開発されましたので、、、きっと次には「拙速な開発」「アレルギー反応が起きた」といった報道がなされるでしょう。

例えば以下のようなものです。

急造ワクチン、受けるか待つか 接種開始の国で悩む邦人 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

コロナワクチンで注意喚起 「深刻なアレルギー」報告受け―米CDC:時事ドットコム


開発が迅速であったのはその通りです。その効果のほかに、安全性は大丈夫なのか、ということは確かに、次に注目される点であろうと思います。


これらの点において、現在まで公開されているデータをみるかぎり、製薬会社はかなり大規模な(数万人規模の)試験を行っておりますし、アメリカなどでの承認過程にも特段問題は出ておりません。

安全性において従来のワクチンとくらべて大きな違いはないように思われますし、製薬会社の対応としても、よくこれだけの短期間で十分な試験を行えたな、と感服します。


今回のワクチン開発が迅速だったのは、豊富な資金と社会の要請があったからで、決して、拙速な開発・急造、という言葉は当たらないと思います。

現在公開されているデータが正しいと信じる限りは。そして私は、これまでと同じように、データを扱う研究者たちの真摯な態度を信じています。

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アレルギー反応は、従来のワクチンでも一定の確率で起きることです

アレルギー反応があった、というだけでは、特別に今回のワクチンだけを怖がる理由にはなりません。


報道をみるにあたって、「何人に接種したなかで、何例の反応がみられたのか」「それは、従来のワクチンに比べて多いのか」「それは、得られるメリットに比べて大きいか、あるいは許容範囲内か」という情報を大事にしないといけません。それらの書いていない報道は、読むに値しません。

きちんと考察の伴った文章を読むようにしましょう。例えば堀向先生(いわゆるほむほむ先生)の文章はいつもながら真摯な内容であります。

『新型コロナワクチンで6人のアナフィラキシー』は、どれくらいのリスク?アレルギー専門医が考察(堀向健太) - 個人 - Yahoo!ニュース


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もうひとつ注意点。

これだけ大規模な試験を行ったワクチンですが、これから世界中の人が接種し始めると、思いもよらなかったような副反応が明らかになる、という可能性はそこそこ高いです。


大規模な試験ではありますが、世界中の人に起こる出来事を事前に抽出できるほどの試験は事前には行えません(それは既に本番ですからね)
ワクチンだけでなくいろいろな薬全般的に、発売後に副反応、副作用が見つかりやすいことは、経験的にわかっています。


ですから、そういうことが起きる可能性はあるだろう、そしてそれは大々的に報じられるかもしれない、という、心の準備をしておいてください。


繰り返しますが、「何人に接種したなかで、何例の反応がみられたのか」「それは、従来のワクチンに比べて多いのか」「それは、得られるメリットに比べて大きいか、あるいは許容範囲内か」、これを読み取るように心がけましょう。


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われわれは人間の性質として、新しいものを怖がるようにできています。

今回も、新しいワクチンがなんだか怖く感じる、という方は一定数いらっしゃるものと思います。


それでも、怖がるとしても、思い込みではなくちゃんと公開されているデータはこうだ、とうことは知っておくべきだと思いますし、

判断を誤らせるような報道については、逐一指摘していくことが、最終的には安全性につながるものだと考えています。


個人的には、現在のデータをみて、自分の順番がきたらさっさと接種していただこう、と思っています。