よしだこどもクリニックのブログ

京田辺市三山木駅前 小児科医院のブログです(2017年6月1日開院)

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当院の抗菌薬使用傾向(2017)

こんばんは

 

今回は抗菌薬の話なのですが、主に同業者さん向けに書きましたので、その目的ですと表1枚で終わってしまいます。ですので、冒頭に表示いたします。

 

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処方量や病名と合わせて分析できると良いのですが、うちのカルテ、そこまで賢くありませんでした。

 

以下にて、一般の患者さん向けにも説明させていただきますが、ちょっとむずかしい話になってしまうかもしれません。

 

はじめに

昨年、厚生労働省が下のようなポスターを作成し・配布し、世代直撃の医療従事者の間で苦笑いとともに受け止められたのですが、なんと申しますか、ガンダムのインパクトが大きすぎて、何を訴えるポスターなのかイマイチわからん、という印象ではありました。

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簡単にいうとどういうこと?

簡単にいうと、抗菌薬(抗生物質)を無秩序に使いすぎると、それに耐えられる菌(耐性菌)ばかりが増えてしまって、世の中のためには良くないよ、そのために、必要最低限の抗菌薬を使おう、という啓発なのです。


必要最低限といってもポイントがいくつかあって、

1 抗菌薬を使う必要があるときとないときは区別しよう(風邪など、ウィルス感染症につかっても意味がないです)

2 抗菌薬を使う必要があるときは、十分な量を使おう(中途半端に使うと、耐性菌が生き残りやすくなります)

3 抗菌薬を使うにしても、目的の菌をしっかり考えたうえで、目的の菌以外はできるだけ効かない抗菌薬を選ぼう(絨毯爆撃のような治療は極力さけよう)


この3点があると思います。

 

これまでの歴史

「抗菌薬を使ったほうがよいかどうか、完璧に判別するのは難しいから、念のため使っておこう」

「目的の菌を考えると言っても、薬が効かない菌が増えているのだから、そういう菌にも効果がある抗菌薬を最初から使うほうが、治療効率がよい」

と、考える方は多くいらっしゃると思います。

 

実際にこのような考え方でもって抗菌薬の開発が進み、治療がされていたのが、1980年〜2000年頃だと思います。その結果、いろいろな「薬の効かない菌」が発生し、それに効く抗菌薬が導入され、イタチごっこになってしまったのでした。

 

2000年以降に医師になった私の世代以下の医師は、このような背景のもとで、よく考えて抗菌薬を使うように教育を受けてきています。

 

しかしそれでも、薬剤耐性菌の勢いが抑えきれておらず、上のようなポスターのように、「抗菌薬の使い方をよく考えよう」という啓発がされるようになったのです。

 

自分の処方傾向を確認してみました

開院して初年が終わりましたので、これを機に、私がどのような抗菌薬をチョイスしてきたか、統計をとってみました。

 

これで分かるのは上記3「目的の菌以外はできるだけ効かない抗菌薬を」選んでいるか?ということです。

 

ただし、難しいのは、狭い範囲の菌にしか効かない抗菌薬を使おうとするあまり実際に効果が得られなければ、患者さんにとって不利益だということです。

 

必ずしも、「狭い範囲の菌にしか効かない抗菌薬」しか使っていないことだけが、評価されるわけではありません。

 

そのときの症状や、過去にどんな治療がされてきた患者さんか、どんな菌が患者さんから検出されているか、といった情報を含めて、その都度判断する必要があります。

 

 それも踏まえつつ、もう一度さっきの表を見て下さい。

 

 

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(商品名は当院で処方しているものですが、昨今ジェネリックが沢山ありますから、必ずしも薬局さんで頂かれた薬と一致するわけではありません)


といっても、これではどれがどのような特徴のある薬なのかわかりませんから、すこし補足させて下さい。

 

それぞれの抗菌薬の特徴

AMPC(ワイドシリン/サワシリン)

これは古くからある抗菌薬で、気管支炎や中耳炎など、気道の感染症によく使います。いわゆる、「ペニシリン」の系統にある抗菌薬です。

効果範囲としては狭い部類ですが、吸収が良いという利点もあって、今でも肺炎や中耳炎の治療では第一選択になっています。


AMPC+CVA(クラバモックス/オーグメンチン)

上記AMPCにすこし足しただけの抗菌薬なのですが、効果範囲がかなり広いです。広いのですが、(日本の)気管支炎や中耳炎によくある菌を想定した場合、あまりAMPCと変わらないんですよね。。。

その割に腸内細菌を殺してしまうので、下痢が多い抗菌薬です。

しかし、小児科の場合には大きなメリットとして、ドライシロップだとAMPCより飲みやすく、濃度が高いので十分な量を使いやすいです。中耳炎のように膿の貯まるような感染だと「十分な量を使う」ことがとても大切なので、それで選択されることが多いと思います。

AMPCを沢山のんでも同じなんですが、濃度が高いぶん、こちらのほうが飲ませやすいのです。しかし下痢が多いし効果範囲が広すぎる、という薬です。


CCL(ケフラール)

これも古くからある抗菌薬で、舐めてみると懐かしい味がします。第1世代セフェムという系統に分類されます。

これは黄色ブドウ球菌という菌に対して第一に選ぶ薬で、とびひなどの皮膚感染症に使っています。他に、尿路の感染にも使われますね。

黄色ブドウ球菌というのは、抗菌薬が効かない菌が増えている代表的な菌なのですが、とびひだと塗り薬も併用するので、合わせ技で100%近く治癒しています。


CFDN(セフゾン)CDTR-PI(メイアクト)

この2剤は第3世代セフェムといって、一時の花形だった薬です。同じグループにCFPN-PI(フロモックス)などもあるのですが、自分が使うのはこの2種類です(この2種類の使い分けもあるのですが割愛)。

いろんな菌に効果があるのですが吸収が悪いので、薄く浅く効くことになります。それで逆に薬の効かない菌を生き残らせてきたのではないかと、昨今槍玉に上がることが多く、ちょっと可哀想な立ち位置になってきています。

個人的にはあまり使うことはないのですが、小児科特有の事情として、味がよく量も少なくて飲ませやすいのがどうしても重要です。そういう目的で選ぶことがあります。

 

CAM(クラリス/クラリシッド)AZM(ジスロマック)

この2剤はズバリ、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳という3つの菌をターゲットにするときに使います。

もっと使っているかと思っていたのですが、昨年はマイコプラズマの流行が大きくなかったのが影響しているかもしれませんね。


FOM(ホスミシン)

細菌性の食中毒のとき(抗菌薬を使わないこともあります)と、とびひでCCLが効かなかった時、尿路感染症のときに選びます。


TFLX(オゼックス)

中耳炎を繰り返して、薬の効かない菌が生き残っている時に使う抗菌薬です。もうすこし使っているかと思っていましたが、意外に少なかったです。


もう一つの使い方として、普通はCAMを用いるマイコプラズマで、薬剤が効きにくくなっている株が以前流行したので、そのような菌を疑う時に使用することがあります。

ですが、CAMが効けばCAMのほうが効果が高いのと、そのような耐性菌が最近は鳴りを潜めていることもあって、あまり使いませんでした。

 

TBPM-PI(オラペネム)

これまで使ったことがないのですが、絨毯爆撃抗菌薬です。中耳炎で使われることがあるようですが、、、。

 

 

おわりに

このような結果となりました。略号も多いですし、なかなか、一度に噛み砕いて説明するのは難しいですが、わりと(意外と?)色々考えながら薬を選んでるんだなー、と思っていただければ幸いです。時間をあけて、また統計をとってみたいですね。